
オトコとオンナの事情・フランス編:第56回 「処女と偽り婚姻無効」判決に世論沸騰
うそがあっては絆は築けない? 処女をめとりたかったオトコが、処女と偽ったオンナに結婚の無効を求めた。オンナはうそを認め、裁判所は双方の望み通り、この結婚を無効としたが一件落着とはいかない。この判決に対し、「男女平等の原則に反する」「女性を犠牲にする悪習」など批判がわき起こり、フランス社会は大騒ぎだ。
ことのはじまりは2年前の7月、フランス生まれのイスラム教徒のカップルが、フランスの役所で結婚式を挙げ、初夜を迎えたときのことだ。イスラム教徒の伝統に従って結婚のうたげは朝方まで続いていた。朝4時ごろ、招待客が最後のミントティーを飲んでいた時、新郎が「妻がうそをついていた」と青ざめた顔をして現れた。新妻は処女ではなかった。
テレビのインタビューに答えた弁護士によると、新郎は「うその上には固いきずなはつくれない」と説明し、法律的には、民法180条に基づいて、結婚相手の「基本的資質(qualites essentielles)」に誤りがあったと主張している。
アラブ風のミントティー 多くのフランス人は処女であることを「基本的資質」と考えない。世論調査で73%のフランス人がこの判決にショックを受けている。(OpinionWay)
そもそも、フランスの民法で「基本的資質」ははっきりと定義されていない。これまで、結婚相手の「基本的資質」の誤りを理由として結婚が無効とされたのは、相手が国籍を偽っていた、前科があった、性的不能であることを隠していた、など。処女についてのうそが問題になったのは始めてだ。
判決は、宗教には触れていないが、当事者はアラブ系移民のイスラム教徒。政教分離を原則とするフランス社会に、「イスラム教を位置づけた」と批判の声がでている。イスラム教徒が持つ価値観、処女を重視する考え方を認めたと。
移民の統合に揺れるフランス 自らもアラブ系移民のダティ法相は、最初は判決を擁護していたが、社会の批判をうけて、「この個人的な事件は、2人の関係を超えて、社会全体、特に女性にかかわる」として控訴を求めた。フランス革命以来、結婚は「個人の契約」であると同時に「社会の制度」でもある。婚姻無効も同じだ。世論を無視して、個人の希望をかなえることはできない。
この結婚を無効とするかどうかは、9月に予定されている控訴審にゆだねられることになった。移民のオトコとオンナが、フランス社会でどんな道を歩んでいくことになるか注目だ。毎日より